賃貸住宅管理業の登録を受けるためには、営業所や事務所ごとに、業務の適正な運営を確保するための「業務管理者」を配置しなければなりません。これは賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)第12条に定められた義務です。
本記事では、業務管理者になれる人の要件や、選任・登録までの具体的な流れを詳しく解説します。内容は2026年8月現在の制度にもとづいています。
この記事でわかること
- 業務管理者の役割と、営業所ごとの配置ルール
- 業務管理者になるための「2つの要件」(専門資格と実務経験)
- 実務経験が2年に満たない場合の代替手段
- 候補者の選定から登録申請・変更届出までの流れ
- 名義貸しの禁止や欠格事由など、見落としやすい注意点
業務管理者は営業所ごとに1名以上、常勤で配置する
先に要点をまとめます。賃貸住宅管理業者は、管理業務を行う営業所または事務所ごとに、1名以上の常勤の業務管理者を選任しなければなりません。そして業務管理者になれるのは、次のいずれかに当てはまる方です。
- 賃貸不動産経営管理士の登録試験に合格していること
- 宅地建物取引士(宅建士)で、指定の講習(実務講習)を修了していること
さらに、上記の資格に加えて2年以上の実務経験が必要になります。経験が足りない場合でも、登録機関が実施する実務講習を修了すれば要件を満たせます。
つまり「資格」と「経験」の二階建てになっている、と考えるとわかりやすいでしょう。どちらか一方だけでは選任できません。ここを取り違えたまま人選を進めてしまうと、申請直前になって候補者を差し替える事態になりかねません。
業務管理者の役割と配置義務

なぜ配置が必要なのか?
賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)に基づき、登録を受けた業者は、管理受託契約の説明や書面の交付、財産の分別管理といった専門的な業務を適正に行う必要があります。これらを監督・指導するのが「業務管理者」です。
なぜここまで厳格に人を置かせるのでしょうか。理由は、賃貸住宅の管理業務がオーナーと入居者という二者の財産と生活に直結するからです。家賃という他人のお金を預かり、原状回復や修繕の判断を代行する以上、法令知識をもった責任者が現場ごとに必要になる、という考え方です。
担当者ごとに説明内容がばらつけば、契約トラブルの温床になります。業務管理者は、そうしたばらつきを社内で統一するチェック役でもあります。
配置のルール
- 設置場所: 賃貸住宅管理業務を行う「営業所」または「事務所」ごとに配置。
- 人数: 各営業所等に1名以上の常勤者を配置する必要があります。
- 兼務の制限: 他の営業所の業務管理者との兼務は原則として認められません(同一の建物内にある場合などを除く)。
ここでいう「常勤」とは、その営業所で通常の勤務時間を通じて働いている状態を指します。ほかの会社に籍を置きながら名前だけ載せる、といった形は認められません。
また、業務管理者が退職などで欠けてしまった場合、新たに選任するまでの間は、その営業所で管理受託契約を締結できません。事業が止まってしまうため、支店展開を考えている会社ほど、有資格者の育成を先回りして進めておくことが大切です。
業務管理者になるための「2つの要件」
業務管理者として選任されるためには、以下の「①専門資格」と「②実務経験」の両方を満たしている必要があります。
要件①:専門資格(いずれか一つ)
現在、業務管理者になれるのは、以下のいずれかの資格を持つ方です。
| 資格の種類 | 内容と追加要件 | 準備しておく書類 |
|---|---|---|
| 賃貸不動産経営管理士 | 登録試験に合格していること。 | 賃貸不動産経営管理士証の写し |
| 宅地建物取引士 | 指定の「指定講習(実務講習)」を修了していること。 | 宅建士証の写し+指定講習修了証の写し |
この2つのルートを比べると、性格の違いが見えてきます。賃貸不動産経営管理士は、賃貸管理そのものを対象とした資格です。一方の宅建士は売買・仲介を含む幅広い資格のため、賃貸管理特有の知識を講習で補う建て付けになっています。
初心者が間違えやすいポイントとして多いのが、「社内に宅建士がいるから大丈夫」という思い込みです。講習の修了証がなければ要件を満たしません。講習は日程が限られることもあるため、登録スケジュールから逆算して申し込んでおくと安心です。
要件②:実務経験(2年以上)
- 2年以上の実務経験が必要です。
- 内容は「賃貸住宅の管理業務」に関する経験です。
- 実務経験が2年に満たない場合: 登録機関が実施する「実務講習」を修了することで、2年以上の実務経験に代えることが可能です。
「2年」という数字には意味があります。入居から更新、退去、原状回復までの一連の流れを、少なくとも一巡は経験しているかどうか。この目安が2年という期間に表れていると考えられます。
たとえば、宅建業として仲介中心にやってきた会社が管理業務へ広げるケースでは、社歴が長くても賃貸管理の経験年数が足りないことがあります。そうした場合に用意されているのが、実務講習という代替ルートです。経験不足を理由に登録を諦める必要はありません。
業務管理者選任から登録申請までの流れ
登録申請に向けて、以下のステップで進めます。手続きの順番を間違えると、書類の再取得で時間を失うことがあります。
- 候補者の選定と資格確認:社内の有資格者を洗い出し、不足があれば採用や講習受講を検討します。
- 講習の受講・修了証の取得:宅建士ルートの方や、実務経験が2年に満たない方はここで受講します。
- 証明書類の収集:資格証や実務経験を示す書類を揃えます。
- 登録申請(新規)または変更届出:電子申請システムから提出します。
ステップ1:候補者の選定と資格確認
社内で要件を満たす者、または新たに採用する者が、以下の書類を揃えられるか確認します。講習の受講が必要な場合は講習を受講した上で必要書類を準備します。
- 賃貸不動産経営管理士証の写し、または宅建士証+指定講習修了証の写し。
- 実務経験を証明できる書類(履歴書や前職の証明書など)。
つまずきやすいのが、前職での経験を証明する書類です。すでに退職した会社に証明を依頼する必要が出てくることもあり、想像以上に日数がかかります。候補者が決まった段階で、早めに着手しておきましょう。
ステップ2:登録申請(新規または変更)
申請は電子申請システムにて行います。
- 新規登録の場合: 賃貸住宅管理業の登録申請書の中に、業務管理者の情報を記載し、資格証明書等を添付して提出します。
- 変更(交代)の場合: 既に登録を受けている業者で業務管理者が交代した場合は、30日以内に変更届出を行う必要があります。
登録後によくあるのが、この変更届出の出し忘れです。人事異動や退職は日常的に起こりますが、届出の期限は30日と短めに設定されています。担当者が代わっても対応できるよう、社内の手続きフローに組み込んでおくことをおすすめします。
選任時の注意点と落とし穴

① 「名義貸し」の禁止
業務管理者は、実際にその営業所で管理業務を監督する実態が求められます。名前を借りるだけの「名義貸し」は法律違反であり、登録の取り消しや罰則の対象となるため、絶対に避けてください。
知人の有資格者に名前だけ貸してもらう、というやり方は一時的に登録が通ったとしても、後の立入検査などで実態を問われます。処分を受ければ事業そのものが立ち行かなくなります。目先の近道は選ばないほうが賢明です。
② 欠格事由の確認
候補者が法律上の「欠格事由(破産者、過去に罰金刑を受けた者など)」に該当していないか、事前に確認が必要です。
欠格事由は、本人に確認しづらい内容を含みます。それでも申請時に発覚すれば手続きは止まってしまうため、候補者を打診する段階で、制度上必要な確認であることを説明したうえで聞き取りをしておくと進めやすくなります。
③ 兼任の可否
宅建業の「専任の宅地建物取引士」と、同一事務所内での「業務管理者」を兼ねることは可能です。
不動産会社にとっては、これはありがたい取り扱いです。ひとつの事務所で仲介と管理を並行している場合、専任の宅建士がそのまま業務管理者を担えます。ただし前提となるのは「同一事務所内」であること。別の営業所を兼ねる形は原則として認められない点に注意してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 賃貸不動産経営管理士の試験に合格していれば、講習は不要ですか?
A. 資格ルートとしては、登録試験に合格していることが要件です。宅建士のように別途の指定講習を修了する必要はありません。ただし、実務経験が2年に満たない場合は、登録機関が実施する実務講習の修了が必要になります。
Q2. 業務管理者は社長本人が務めてもよいですか?
A. 要件を満たしていれば問題ありません。代表者が資格と実務経験を備えているケースは少なくありません。ただし、その営業所に常勤していることが前提です。複数拠点を行き来する立場の方は、常勤性を満たせるか慎重に検討してください。
Q3. 業務管理者が急に退職した場合、どうなりますか?
A. 新たな業務管理者を選任するまでの間、その営業所では管理受託契約を締結できません。あわせて、交代の際は30日以内に変更届出が必要です。事業への影響が大きいため、複数の有資格者を確保しておく体制づくりが望まれます。
Q4. パート・アルバイトでも業務管理者になれますか?
A. 求められるのは「常勤」であることです。勤務形態の名称よりも、その営業所で通常の勤務時間を通じて勤務し、管理業務を監督できる実態があるかどうかが判断のポイントになります。個別の判断は管轄の窓口にご確認ください。
Q5. 営業所が2か所ある場合、業務管理者は何人必要ですか?
A. 営業所または事務所ごとに1名以上が必要です。したがって2か所であれば、原則として2名の業務管理者が必要になります。他の営業所との兼務は原則認められません(同一の建物内にある場合などを除く)。
まとめ
賃貸住宅管理業登録において、業務管理者の選任は「登録の要(かなめ)」です。資格要件について正確に把握して法令遵守に努めましょう。
あらためて、押さえておきたい点を整理します。
- 営業所・事務所ごとに1名以上、常勤の業務管理者を選任する
- 資格は「賃貸不動産経営管理士」または「宅建士+指定講習修了」のいずれか
- 加えて2年以上の実務経験が必要。不足分は実務講習で代替できる
- 名義貸しは厳禁。欠格事由の確認も忘れずに
- 交代した場合は30日以内に変更届出を行う
登録の可否は、人の確保にかかっていると言っても大げさではありません。有資格者の育成には時間がかかるため、事業計画と並行して準備を進めることが結果的に近道になります。
※制度の詳細や必要書類は変更される場合があります。最新の要件については、国土交通省の公表資料や管轄の地方整備局等の窓口にご確認ください。
