- 2026/3/6~4/30 第3回小規模事業者持続化補助金(創業型)
- 創業1年以内の小規模事業者の開業直後の競争力強化を促進
- 2026/3/6~4/30 第3回小規模事業者持続化補助金(一般型通常枠)
- 小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援
- 2026/3/30~8/25 デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)
- 生産性向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援
- 2026/4/3~5/8 ものづくり補助金第23次公募
- 中小企業・小規模事業者の革新的な製品・サービス開発や海外需要開拓を支援
- 2026/4/中~5/中 第6回中小企業省力化投資補助事業(一般型)
- IoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるオーダーメイド設備の導入を支援
- 2026/5/19~6/19 第4回中小企業新事業進出補助金
- 既存事業とは異なる新分野へ進出を促進
- 随時 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
- 予め登録された製品カタログから選ぶだけで申請可能
【新事業進出補助金】第2回公募の採択結果分析から見る採択率を上げるための今後の対策
中小企業新事業進出促進補助金(新事業進出補助金)の第2回公募の採択結果が、2026年3月に発表されました。第4回公募の申請受付が始まった今、これから申請を検討している事業者にとって「どのような事業が採択されているのか」「採択率はどのくらいか」を知ることは、戦略的な申請準備につながります。
本記事では、事務局が公開した「第2回公募の採択結果について」(令和8年3月)をもとに、採択の実態を多角的に分析します。

第2回の基本データ:採択率35.4%を維持
まず、第2回の全体像を確認しましょう。
| 項目 | 第1回 | 第2回 |
|---|---|---|
| 応募件数 | 3,006件 | 2,350件 |
| 採択件数 | 1,118件 | 832件 |
| 採択率 | 37.2% | 35.4% |
| うち関税加点対象 | 590件(52.8%) | 446件(53.6%) |
第2回では応募件数が約656件減少しましたが、採択率は第1回(37.2%)からわずか1.8ポイント低下の35.4%にとどまっています。
他の経済産業省系補助金と比較すると、小規模事業者持続化補助金(約60%)やものづくり補助金(約49%)より低い水準ですが、それでも「申請者の約3人に1人が採択される」という水準は維持されています。前身の事業再構築補助金が終盤に採択率20%台まで落ち込んだことと比べると、現時点では依然としてチャンスのある補助金と評価できます。
応募件数が減った理由
応募件数が第1回より600件以上減少した要因としては、以下が考えられます。
- 申請に必要な「新事業進出指針」への適合要件が、制度開始後に広く認知されたことで、要件を満たしにくい事業者が自ら申請を見送ったこと
- 事業計画作成のハードルが高く、本気で新事業に取り組む事業者に絞られてきたこと
裏返せば、「適切な準備を行えば、競争相手はより質の高い事業計画を持つ事業者に絞られてきている」ということでもあります。準備なしに申請してもはじかれる一方で、しっかりと準備した事業者には採択の可能性は十分あります。
業種別の採択傾向:製造業・建設業・卸小売が三強
採択された832件の業種内訳(既存事業ベース)は、以下のようになっています。
| 業種(大分類) | 採択件数(第2回) | 採択件数(第1回) |
|---|---|---|
| 製造業 | 219件 | 320件 |
| 建設業 | 156件 | 158件 |
| 卸売業・小売業 | 109件 | 166件 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 66件 | 77件 |
| その他(各業種) | 合計282件 | 合計397件 |
第1回・第2回を通じて、製造業、建設業、卸売業・小売業の3業種がトップ3の座を維持しています。
なぜ製造業が最多採択なのか
製造業は両回通じて採択件数トップです。その理由は「製造業に有利な制度だから」ではなく、製造業という業態が「新事業進出要件」を満たしやすい構造にあるからです。
製造業は、既存の製造技術・設備・人材・品質管理ノウハウを活かしながら、異なる市場(異なる顧客層・産業)向けの新製品を開発しやすいため、「製品の新規性」と「市場の新規性」の両方を説明しやすいのです。
実際に採択された事業計画のテーマには、以下のような例が見られます。
- 自動車部品メーカーが医療機器分野へ参入(市場転換型)
- 製造現場の検査工程に高精度CT画像解析を導入し、新たな解析受託サービスを開始
- 食品製造業がHACCP対応の新工場を建設し、高付加価値食品市場へ進出
建設業:本業の強みを活かした社会課題解決型が強い
建設業は採択件数で製造業に次ぐ156件と、第1回(158件)とほぼ同水準を維持しました。建設業での採択案件の特徴として、
- 社会インフラの維持・更新(老朽化インフラの非破壊検査事業、橋梁点検ドローン事業など)
- 環境配慮・脱炭素分野への参入(木質バイオマス、太陽光関連設備施工など)
- EV対応型認証整備工場の新設
が挙げられます。建設業では、既存の施工技術や認許可資格を持ちながら、社会課題の解決につながる新分野へ展開する「本業周辺の課題解決型」が評価されやすい傾向があります。
卸売・小売業:「川上・川下」への垂直展開が採択の鍵
卸売・小売業では、既存の調達・販売チャネルを活かして、川上(製造・加工)や川下(体験・サービス)へ垂直展開するパターンが多く見られます。採択例としては、
- 中古タイヤ卸売業者が中古車販売事業へ参入
- 米穀販売店が冷凍おにぎり・おこわの製造販売事業を開始
- 水産物卸売業者がHACCP対応の水産加工拠点を構築
といった事業が採択されています。単なる「品揃えの拡充」や「販売地域の拡大」では新市場性が認められないため、ターゲット顧客層を明確に切り替える設計が採択の分岐点になります。
宿泊業・飲食サービス業:66件採択で「主戦場」の一角に
第2回では宿泊業・飲食サービス業が66件採択され、上位4業種の一角を占めています。単に「飲食店がテイクアウトを始める」「旅館が設備更新する」といった既存サービスの改善ではなく、これまでターゲットとしていなかった顧客層(例:インバウンド外国人、富裕層、長期滞在者など)を対象とした新事業として設計することが採択の条件です。
地域別の採択傾向:都市集中に見えて、実は全国型
都道府県別に見ると、採択件数の上位は東京都(129件)、大阪府(81件)、愛知県(59件)と、首都圏・主要都市が上位を占めています。しかしこれは単純に人口・企業数が多いためであり、地方だから採択されにくいという傾向はありません。
実際に地方の採択状況を見ると、兵庫県(44件)、静岡県(28件)、福岡県(28件)、愛知県(59件)など、地方都市でも安定した採択実績があります。北海道(22件)、熊本県(16件)、富山県(14件)、香川県(14件)なども、都道府県内の中小企業数に対する割合で見ると決して低くない水準です。
この補助金は「立地よりも事業内容が評価される補助金」です。地方の事業者も自信を持って挑戦できる制度といえます。むしろ地方の場合は、地域固有の産業・資源・ニーズと新事業の結びつきを丁寧に説明することで、政策面の評価(地域経済への波及効果など)でプラスになる可能性があります。
補助金申請額の傾向:「1,000万〜3,000万円」に集中
申請された補助金額の分布を見ると、最も応募が多かったのは2,500万円以上〜3,000万円未満(480件)で全体の約20%を占めています。次いで1,000万円以上〜1,500万円未満(378件)、2,000万円以上〜2,500万円未満(295件)の順です。
全体として1,000万円〜3,000万円の帯に応募が集中しており、「しっかりとした設備投資を伴う新規事業」が主流であることが読み取れます。
注目すべきは高額帯の採択率です。第1回公募のデータでは、3,000万円以上〜3,500万円未満で採択率51.6%、5,000万円以上で50.7%と、高額申請ほど採択率が高い傾向があります(サンプル数は少ない)。逆に500万円以上〜1,000万円未満では採択率が28.5%にとどまっています。
これは、高額申請が「それだけ本格的な新事業投資を行う覚悟と計画がある」と判断されやすいためと考えられます。補助上限額いっぱいまで申請することが必ずしも不利ではなく、むしろ投資規模の妥当性を丁寧に説明できれば、高額申請は強みになり得ます。
関税加点の影響:採択者の半数以上が対象
第2回で大きな特徴として浮かび上がったのが、関税加点対象案件の多さです。採択832件のうち446件(53.6%)が関税加点の対象でした。第1回でも採択1,118件のうち590件(52.8%)が対象であり、2回連続して採択者の過半数が関税加点対象となっています。
関税加点とは、米国の関税措置による影響を受けている(またはその見込みがある)事業者への加点です。第4回の公募要領でも、事業計画書の中で「米国の関税措置による影響を受けているまたは見込まれる場合、影響の内容を具体的に記載してください(任意)」と記載されており、引き続き加点対象となっています。
製造業や卸売業など、貿易・輸出入に関わる事業者は、この加点要件への対応を検討する価値が十分あります。
採択される事業計画の「共通構造」とは
第1回・第2回の採択結果を通じて見えてくる、採択される事業計画に共通する構造があります。
① 「新しいことを始める」ではなく「強みを別市場に持ち込む」
採択された事業の多くは、まったくゼロから新しいことを始めるのではなく、既存事業で培った技術・ノウハウ・設備・人材・顧客基盤を武器として、これまでアプローチしていなかった市場に展開する設計になっています。
「何が新しいか」を考える前に「自社には何があるか」を棚卸しし、その強みを活かして参入できる新市場を探す——この順序が採択される事業計画の基本形です。
② AIやDXは「目的」ではなく「手段」として位置づける
採択された事業計画の中には、AIやDX、IoT、SaaS、データ解析といったキーワードを含む案件が多数見られます。しかし重要なのは、これらの技術を「やります」と宣言することではなく、「この業界の、この具体的な課題を、この技術でこう変える」という具体性です。
例えば「製造現場の品質検査をAIで自動化し、B-to-B向けの精密検査受託サービスを新たに開始する」という形で、技術が事業の課題解決・付加価値創出の手段として明確に位置づけられているケースが評価されています。
③ 「製品の新規性」と「市場の新規性」を両立させる
審査では製品・サービスの新規性と市場の新規性の両方が問われます。既存製品と新製品の違い、既存顧客と新顧客の違いを、写真・図表・客観的データを交えながら具体的かつ網羅的に説明することが重要です。
よくある不採択パターンとして、「既存製品のマイナーチェンジ」「既存顧客の一部セグメントをターゲットにするだけ」「単に販売地域を広げる」といったケースが挙げられます。自社の新事業がこれらに該当しないかどうか、申請前に公募要領の「新事業進出指針の手引き」で厳しくセルフチェックすることが不可欠です。
④ 高付加価値化・高価格化の根拠を客観データで示す
審査では「新市場性」か「高付加価値性」のいずれかを選択して評価されます。どちらを選んでも、主観的な説明ではなく、市場調査データや統計・価格調査など客観的な根拠が求められます。
例えば「この市場は現状、一般的な価格帯が〇〇円であるのに対し、当社の新製品は△△円を実現する。その根拠となる独自の技術・強みは〜〜である」という論理展開が審査委員に刺さる説明の構造です。政府が無料提供するRESAS(地域経済分析システム)なども積極的に活用しましょう。
⑤ 賃上げ・付加価値計画と事業計画が一貫して整合している
採択された事業計画では、新事業の売上・利益の成長が賃上げ計画の原資として論理的につながっており、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率4%以上という目標の実現可能性が数字で裏付けられています。
収益計画を作る際は「いくら補助金がもらえるか」から逆算するのではなく、「この新事業でどれだけの付加価値を生み出せるか」から積み上げる思考が重要です。
第2回で見えた「注意すべき変化」
審査の本質的な実現可能性の見極めが厳しくなった
第1回と比べて採択率がわずかに低下したことは、単純に「難しくなった」ではなく、「より本質的な実現可能性が問われるようになった」と捉えるべきです。
第1回を経て審査側も知見を蓄積しており、「形式上は新事業進出要件を満たしているが、実際に実現可能か疑わしい計画」や「過度な楽観的収益計画」は弾かれやすくなっています。スケジュール・投資額・収益見込みが三位一体で筋の通った計画を作ることが今まで以上に求められています。
応募件数が減っても「競争の質」は上がった
応募件数が減ったからといって、競争が緩和されたとは言えません。制度の認知が進んだ結果、本気で新事業に取り組む事業者の比率が高まっている可能性があります。「ライバルが減ったから楽になった」ではなく、「ライバルの質が高まった」という認識で準備することが重要です。
第4回公募への申請に向けて:データから見える戦略
第1・2回の採択データから導き出せる、第4回申請への実践的な戦略をまとめます。
1. 自社の「強みの棚卸し」から始める
採択される事業の基本形は「強みの別市場への転用」です。技術・ノウハウ・設備・人脈・顧客基盤など、自社が持つ資産を徹底的に洗い出し、それを活かせる新市場を探す順序で事業計画を設計しましょう。
2. 業種に関係なく、新事業進出要件の適合性を最優先で確認する
製造業・建設業が採択上位ではありますが、それ以外の業種でも十分採択されています。業種よりも「製品の新規性」「市場の新規性」の2要件を満たせているかどうかが決定的です。
3. 高額申請も選択肢に入れる
補助上限額に近い高額申請は、採択率の面でも優位な傾向があります。投資規模の必要性と妥当性を丁寧に説明できれば、高額申請は弱点ではありません。
4. 関税加点の対象か確認する
採択者の半数以上が関税加点対象です。米国の関税措置による影響がある事業者は、事業計画書でその影響と対応を具体的に記述することを強くおすすめします。
5. 地方企業は地域資源や地域経済への波及効果を積極的に記述する
地域別の採択状況は全国型の広がりを持っています。地方の事業者は、地域の資源・産業との結びつきや雇用創出効果など、政策面での意義を丁寧に説明することが評価につながります。
6. 収益計画・賃上げ計画は「実現可能な高い目標値」を設定する
賃上げ要件(年平均3.5%以上)と付加価値額要件(年平均4.0%以上)は、基準値を超える高い目標値を設定するほど審査で加点されます。ただし、実現可能性の根拠が求められます。根拠のない高い目標値は逆効果なので、事業の収益構造から積み上げた数字で説明しましょう。
まとめ
第2回公募の採択結果から見えてくるのは、「本気で新事業に取り組む事業者が、しっかりと準備して申請すれば採択のチャンスは十分ある」という現実です。採択率35.4%という数字は、他の補助金と比べると高いとは言えませんが、準備の質によって大きく左右される補助金です。
採択事業に共通するのは、「ゼロから新しいものを作る」発想ではなく、「自社の強みを別市場に展開する」という構造です。業種・地域・規模にかかわらず、この軸で事業計画を設計し、客観的データで裏付けることが採択への近道です。
第4回公募の申請締切は2026年6月19日(金)18:00です。GビズIDの取得や一般事業主行動計画の公表など、時間のかかる事前準備は早めに着手し、万全の体制で挑みましょう。
※本記事は「中小企業新事業進出促進補助金 第2回公募の採択結果について(令和8年3月、中小企業新事業進出補助金事務局)」および関連する公開情報に基づいて作成しています。詳細な採択者一覧は事務局の公式ホームページ(https://shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/results)でご確認ください。

