印鑑はサインで代替できる?奥が深いハンコの話
こんにちは。KC行政書士事務所です。
契約や手続き・申請などの公的な場面から、社内手続きや宅急便の受け取りといった日常的なシーンまで、何かと必要になる印鑑。普段何気なく使用している方がほとんどなのではないでしょうか。
実は海外では印鑑ではなく署名(サイン)が広く使われている一方で、日本はハンコ社会と言われるほど、印鑑文化が根付いています。
そう考えると日本でも印鑑を持ち歩かず署名で手続き関係が済めば楽そうなものです。私も以前働いていた職場ではやたらと印鑑を押す風習があり、印鑑を忘れた日には「社会人としての自覚」を盾に詰められたものですが、現実問題として印鑑と署名の役割の違いはあるのでしょうか。
「ハンコを押す」のは法的拘束力を持たせるため
さて、「ハンコを押す」場面の代表は各種契約時だと思います。契約時に「印鑑をお持ちください」なんて言われると忘れないようにと身構えますし、印鑑を忘れてしまったときには煩わしささえ感じてしまうものです。
この「契約書のハンコ」ですが、風習に従ってなんとなく押しているわけではなく、これには「ハンコを押した当事者の意思表示に証拠を持たせるため」という法的な目的があります。文書にハンコを押すことで、本人によって同意されたものであるということに、法的拘束力を持たせているのです。
署名捺印と記名押印の違い
このように文書に法的拘束力を持たせるハンコですが、「署名」「記名」、「捺印」「押印」といった似たような用語があります。似ているようで、それぞれの意味は異なります。
「署名」は自筆で名前を記すことで、いわゆるサインと同義です。これに対して「記名」とは手書き以外で名前を記すことで、パソコンであらかじめ印刷しておいたり、ゴム印を押すことを指します。
「捺印」は「署名捺印」の省略されたもので、自筆の署名と共に押される印鑑のことを指します。一方、「押印」は記名と共に押される印鑑のことを指します。
「署名」と「押印」は同じ効力を持つ
民事訴訟法第228条では、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定されています。つまり、契約書に法的拘束力を持たせる、という意味では、「署名(サイン)」と「押印」は同じ効力を持っているのです。
「印鑑を忘れたならサインでもいいです」といった対応がなされる場面もありますが、原則はどっちでもいいのです。
原則印鑑は署名で代替可能
ということで、印鑑は原則署名で代替可能であり、法的な意味合いとしては署名も押印も違いはありません。
※ただし、自筆証書遺言など、一部法律文書は自署に押印が必要なものもあります。