同性カップルの公正証書4点セット|費用と手順

同性カップルが法的な備えを整える場合、パートナーシップ合意契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言の4つを公正証書で作る形が基本になります。

公証役場に支払う手数料は政令で定められており、目的の価額ごとに金額が決まっているため、事前にかなり正確な見積もりが立てられます。2025年10月1日に改正後の公証人手数料令が施行され、金額の一部が変わりました。二人分をまとめて作る場合の総額と、必要書類、作成までの流れを具体的に示します。

※2026年9月現在の情報です。金額は公証役場に支払う手数料であり、専門家に作成を依頼する場合の報酬は別途かかります。

目次

4点セットが、それぞれ別の場面を受け持つ

4つの書類は目的が重なっておらず、どれか1つで代用することはできません。どの場面を誰が受け持つかを整理してから、必要なものを選んでください。

書類受け持つ場面作成する数
パートナーシップ合意契約二人の関係と取り決めを公的な書面で示す二人で1通
任意後見契約判断能力が低下したときの財産管理と手続きそれぞれ1契約(計2契約)
死後事務委任契約葬儀、行政への届出、住居の明渡しそれぞれ1契約(計2契約)
遺言財産を相手に渡すそれぞれ1通(計2通)

任意後見契約と遺言は、一人ひとりが自分のために作るものです。二人で1通にまとめることはできず、それぞれが当事者となる書類を用意します。

公証役場に支払う手数料の実額

法律行為に関する公正証書の手数料は、目的の価額に応じて政令で定められています。

目的の価額手数料
50万円以下3,000円
50万円超 100万円以下5,000円
100万円超 200万円以下7,000円
200万円超 500万円以下13,000円
500万円超 1,000万円以下20,000円
1,000万円超 3,000万円以下26,000円
3,000万円超 5,000万円以下33,000円
5,000万円超 1億円以下49,000円

根拠:日本公証人連合会「手数料」(公証人手数料令、令和7年政令第263号改正、令和7年10月1日施行)

パートナーシップ合意契約や死後事務委任契約のように、目的の価額を算定することができないときは、例外的な場合を除いて500万円とみなされます。その結果、手数料は13,000円になります。

任意後見契約公正証書の手数料は、1契約につき13,000円です。これに加えて、収入印紙代2,600円、法務局への登記嘱託手数料1,600円、書留郵便料、正本・謄本の交付手数料がかかります。

根拠:日本公証人連合会「任意後見契約公正証書を作成する費用は、いくらでしょうか?」

遺言の場合は、財産の価額に応じた手数料に遺言加算が上乗せされます。全体の財産が1億円以下のときは13,000円が加算される仕組みです。

根拠:日本公証人連合会「公正証書遺言の作成手数料」

二人分をまとめて作る場合の総額

二人ともおおむね1,000万円の財産を持ち、互いを受任者・受遺者とする場合で計算すると、次のようになります。

書類単価数小計
パートナーシップ合意契約13,000円1通13,000円
任意後見契約(印紙・登記嘱託を含む)17,200円2契約34,400円
死後事務委任契約13,000円2契約26,000円
公正証書遺言(20,000円+遺言加算13,000円)33,000円2通66,000円
合計139,400円

これに正本・謄本の交付手数料が加わります。書面での交付は1枚につき300円、電磁的記録での交付は1件につき2,500円です。証書を紙に出力した枚数が3枚を超えるときは、超える1枚ごとに300円が加算されます。

財産の額が変われば遺言の部分だけが変動します。財産が3,000万円なら遺言の手数料は26,000円となり、遺言加算を含めて1通39,000円です。ほかの3つは価額に左右されないため、総額の見通しは立てやすい構成になっています。

公証人に出張してもらう場合は、日当20,000円(4時間以内は10,000円)と交通費実費が加わります。病床での作成では手数料が50パーセント加算されます。

必要書類をそろえる

任意後見契約の場合、本人と受任者それぞれが用意する書類は次のとおりです。ほかの3つも、おおむね同じ書類で対応できます。

  • 本人(委任者):印鑑登録証明書と実印、または運転免許証・マイナンバーカード等の顔写真付き公的身分証明書と認印。加えて戸籍謄本または抄本、住民票。
  • 受任者:印鑑登録証明書と実印、または顔写真付き公的身分証明書と認印。加えて住民票。

根拠:日本公証人連合会「任意後見契約を結ぶには、どんな書類等が必要ですか?」

印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限られます。戸籍や住民票も同様に期限が設けられている場合があるため、早く取りすぎないよう注意してください。

遺言を作る場合は、渡す財産を特定する資料も必要です。不動産があれば登記事項証明書と固定資産評価証明書、預貯金があれば通帳の写しを用意します。財産の価額によって手数料が決まるため、この資料が見積もりの前提になります。

自治体のパートナーシップ宣誓制度を利用している場合、受領証の写しを持参すると、二人の関係を説明する手間が省けます。名古屋市の制度については名古屋市ファミリーシップ制度の申請手順で扱っています。

作成当日までの流れ

公証役場は予約制です。いきなり訪問しても作成できないため、次の順で進めます。

  1. 事前相談:電話やメールで相談し、作りたい内容を伝えます。
  2. 案文の作成:伝えた内容をもとに、公証人が案文を作ります。
  3. 書類を提出する:必要書類を郵送または持参します。
  4. 内容を確認する:案文を確認し、修正したい点を伝えます。
  5. 当日に署名する:公証役場に出向き、内容の読み聞かせを受けて署名押印します。

二人そろって公証役場に出向く必要があるのは、原則として最終日だけです。それまでのやり取りは、電話やメールで進められます。

所要期間は、案文のやり取りにどれだけ時間をかけるかで変わります。内容が固まっていれば数週間で完了しますが、財産の資料集めから始める場合は1か月以上かかることもあります。急ぎの事情がある場合は、最初の相談でその旨を伝えてください。

公正証書遺言には証人2人の立会いが必要です。適当な人がいない場合、公証役場で紹介してもらえることがあり、その場合は別途費用がかかります。パートナーは受遺者となるため証人にはなれません。

どれから作るか迷ったとき

予算の都合ですべてを一度に作れない場合、優先順位は財産の状況と年齢によって変わります。判断の目安は次のとおりです。

  • 持ち家がある、まとまった財産がある:遺言を最優先にします。相続権がない以上、遺言がなければ何も渡りません。
  • 賃貸で暮らしている:死後事務委任契約を優先します。住居の明渡しと残置物の整理を任せられる状態にしておくためです。
  • 病院や施設で関係を説明する場面が多い:パートナーシップ合意契約を先に作り、提示できる書面を持っておきます。

相続権がないことへの対策全般は同性パートナーに相続権はない|財産を渡す4つの方法、親が健在な場合の遺留分については親の遺留分は3分の1|パートナーへの遺贈が削られるをご覧ください。

よくある質問

4点すべてを作らないといけませんか。

必須ではありません。財産の状況と暮らし方によって、必要なものから作れば足ります。ただし、遺言と死後事務委任契約は目的が異なるため、どちらか一方で両方を兼ねることはできません。

専門家に頼まず、自分たちで公証役場に行けますか。

内容が固まっていれば、直接相談して作成できます。公証人は中立の立場で作成するため、二人にとって有利な条件を提案する役割は担いません。取り決めの内容に迷いがある場合は、案文を作る段階で専門家に相談する形が一般的です。

後から内容を変えられますか。

遺言はいつでも書き直せます。契約については、当事者の合意があれば変更や解除ができます。任意後見契約は、任意後見監督人が選任される前であれば、公証人の認証を受けた書面によって解除できます。

手数料は当日に支払うのですか。

作成当日に公証役場で支払うのが一般的です。現金のみの取扱いとしている役場もあるため、支払方法を事前に確認しておいてください。

まとめ

パートナーシップ合意契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言の4点を二人分そろえる場合、公証役場に支払う手数料は財産1,000万円程度のケースでおよそ13万9千円が目安になります。手数料は政令で定められているため、財産の額がわかれば事前に正確な見積もりが立てられます。

必要書類は印鑑登録証明書、戸籍、住民票が中心で、印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限られます。二人そろって公証役場に出向くのは原則として最終日だけで、それまでは電話やメールでやり取りできます。予算の都合で一度に作れない場合は、財産があるなら遺言から、賃貸暮らしなら死後事務委任契約から始めてください。

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