
入院時の身元保証人を親族に限るという法律はないため、同性パートナーの名前を身元保証人欄に書くこと自体に法的な問題はありません。ただし、病院の身元保証人欄には、入院費の連帯保証、緊急連絡先、退院時の引取り、亡くなったときの遺体の引取りといった複数の役割がまとめて含まれており、署名したパートナーはその役割に応じた責任を負います。誰を保証人にするかは病院の判断に左右される部分もあるため、役割ごとの意味、続柄の書き方、署名する前の確認点、親族に限ると言われたときの対応を順に取り上げます。
※2026年10月現在の情報です。身元保証人の条件や書式は医療機関ごとに異なるため、入院先の書式と説明を必ずご確認ください。
身元保証人を親族に限る法律はない
入院時に身元保証人を求める根拠は、法律ではなく各病院の運用です。医療法や医師法には、入院の条件として身元保証人を立てることを定めた規定がなく、まして保証人を親族に限るという定めもありません。
厚生労働省は、身元保証人等がいないことのみを理由に入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触するとの通知を出しています。保証人を立てることが入院の条件ではない以上、誰を保証人とするかについても、病院は本人の事情に応じて柔軟に対応できる立場にあります。
根拠:厚生労働省医政局医事課長通知「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(PDF)(2018年4月27日)
実際には、書式に「親族」「二親等以内」などの条件が書かれている病院もあります。これは病院が独自に設けた条件であり、事情を説明すれば親族以外の保証人を認めたり、保証人なしで入院を受け入れたりする病院も多くあります。保証人がいない場合の入院の進め方は、入院時に身元保証人がいない|断られたときの対処法で取り上げています。
身元保証人欄には、4つの役割が詰め込まれている

病院が身元保証人に期待している役割は、主に次の4つです。書式の上では1つの署名欄でも、それぞれ法的な性質がまったく異なります。
| 役割 | 内容 | パートナーが担えるか |
|---|---|---|
| 費用の連帯保証 | 入院費を本人が払えないときに代わりに支払う | 担える(極度額の範囲で金銭的な責任を負う) |
| 緊急連絡先 | 容体の急変時などに病院から連絡を受ける | 担える(法的な義務は伴わない) |
| 退院時の引取り | 退院や転院のときに本人を迎え、手続きを手伝う | 担える |
| 遺体の引取り | 亡くなった場合に遺体や遺品を引き取る | 担える(ただし遺品の処分には相続人との調整が必要) |
ここで押さえておきたいのは、身元保証人の役割に医療行為への同意は含まれないという点です。手術などへの同意は本人の権利であり、身元保証人だけでなく法律上の家族にも同意権は認められていません。同意の問題は保証人欄とは別に考える必要があり、詳しくは同性パートナーは手術同意できる?医療同意権の正しい理解で取り上げています。
4つの役割の法的な中身は、身元保証人とは何を保証するのか|入院・入所の4つの役割でも詳しく扱っています。
連帯保証を引き受けると、パートナーが負う責任
4つのうち、署名したパートナーに最も重い責任が生じるのが費用の連帯保証です。入院費のように、入院中に発生する金額が決まっていない債務を保証する契約は根保証契約に当たり、個人が保証人になる場合は極度額(保証する上限額)を定めなければ効力を生じません。
根拠:民法(e-Gov法令検索)第465条の2
極度額が書かれていれば、パートナーはその金額を上限として入院費の支払い責任を負います。たとえば極度額50万円の書式に署名した場合、本人が支払えなかった入院費は50万円までパートナーに請求される可能性があります。
支払ったパートナーは本人に返済を求められますが、本人が亡くなった場合、その請求の相手は本人の相続人になります。同性パートナーは法定相続人にならないため、本人の親やきょうだいに請求する形になり、関係によっては回収が難しくなることも考えておく必要があります。
遺体の引取りと死亡届は、パートナーでもできる
本人が亡くなった場合、遺体の引取りや火葬の手配をパートナーが行うことは法律上妨げられていません。墓地、埋葬等に関する法律は、埋葬や火葬を行う者がいないときに死亡地の市町村長が行うと定めているだけで、行う者を親族に限ってはいません。
根拠:墓地、埋葬等に関する法律(e-Gov法令検索)第9条
死亡届についても、戸籍法第87条は届出義務者として同居の親族に続き「その他の同居者」を挙げています。一緒に暮らしているパートナーであれば、同居者として死亡届を提出できます。
根拠:戸籍法(e-Gov法令検索)第87条
一方で、本人の遺品や預金は相続人のものになるため、パートナーが勝手に処分すると後でトラブルになりかねません。葬儀の方法や遺品の整理まで任せたい場合は、死後事務委任契約をあらかじめ結んでおくと、パートナーが受任者として手続きを進める根拠になります。
署名する前に確認しておく3つのこと

パートナーが身元保証人を引き受けると決めたら、署名の前に次の3点を確認してください。書式をよく読まずに署名すると、想定していなかった責任まで引き受けることになりかねません。
①極度額がいくらと書かれているか
書式に極度額の記載があるか、あるとすればいくらかを確認します。極度額の欄が空欄のまま署名を求められた場合は、記入してもらうか、記載がない理由を病院に尋ねてください。極度額のない連帯保証の定めは効力を生じないため、パートナーが金銭的責任を負わない形になるとも考えられますが、後の紛争を避けるためにも、内容を確認したうえで署名するのが確実です。
②続柄をどう書くか
続柄の欄には、「パートナー」「同居人」など、実際の関係に沿った言葉を書きます。法律上の関係がないのに「妻」「夫」と書くと、事実と異なる記載になり、後で説明を求められたときに困ることがあります。
パートナーシップ宣誓制度の受領証がある場合は、続柄を「パートナー(パートナーシップ宣誓済)」とし、受領証の写しを添えると、病院側も関係を確認しやすくなります。住民票で同じ世帯になっている場合は、住民票の写しも関係を示す資料になります。
③どの役割を引き受けるのか
連帯保証は負担が大きいと感じる場合は、緊急連絡先と退院時の引取りだけを引き受け、連帯保証は別の方法で対応できないかを病院に相談する方法もあります。入院費は、入院時の預かり金や、本人のクレジットカードの登録で対応できる病院もあります。
親族に限ると言われたときの対応
書式に「親族」と書かれていたり、窓口で「ご家族の方でないと」と言われたりした場合は、まず病院の医療ソーシャルワーカーや入退院支援の担当者につないでもらうよう依頼してください。受付の職員は書式どおりの案内をするしかないことが多く、例外の判断は担当部署が行うのが一般的です。
説明するときは、法律上の家族はいないが、パートナーとして生活を共にしており、費用の支払いや緊急時の対応はパートナーが行えることを伝えます。パートナーシップ宣誓制度の受領証や、公正証書で作ったパートナーシップ合意契約書、任意後見契約書などがあれば、継続した関係があることの客観的な資料になります。
それでも認められない場合は、身元保証人なしでの入院を求めることもできます。身元保証人がいないことのみを理由とした入院拒否は医師法上の問題になるという国の通知があるため、その点を伝えて対応を相談してください。救急搬送時など、その場で関係を説明する場面での伝え方はパートナー救急搬送|「ご家族ですか」への答え方が参考になります。
入院の前に整えておきたい書面
身元保証人欄にパートナーの名前を書けたとしても、それだけで病状説明や面会、亡くなった後の手続きまでがスムーズになるわけではありません。入院を見越して、次の書面を整えておくと、保証人欄に書いた役割を法的に裏づけられます。
- 医療に関する意思表示書:パートナーへの病状説明や面会を希望すること、治療方針を一緒に考えてほしいことを本人が書面で残す
- 任意後見契約:判断能力が低下したときに、入院費の支払いや契約の手続きをパートナーに任せる
- 死後事務委任契約:遺体の引取り、葬儀、病室の片付けや費用の精算をパートナーに任せる
- 遺言書:財産をパートナーに遺すと同時に、保証人として立て替えた費用の精算方法も決めておく
それぞれの書面の効力と作り方は、同性カップルが今できること|効力を持つ5つの書面にまとめています。入院の場面で窓口に示す書面に絞った準備は、同性パートナーの面会を断られたら|持ち歩く書面3点で取り上げています。
よくある質問
パートナーシップ宣誓をしていないと、保証人になれませんか。
宣誓制度の利用は、身元保証人になるための条件ではありません。保証人を誰にするかは病院の判断であり、宣誓していなくても認められることはあります。ただし、受領証があると関係を説明しやすくなるため、制度がある自治体に住んでいる場合は利用を検討する価値があります。
保証人になった後に別れた場合、責任はどうなりますか。
連帯保証の責任は、その入院に関する契約として残ります。別れたことによって自動的に責任がなくなるわけではないため、関係を解消するときは、入院中や未精算の費用がないかを確認し、必要であれば病院と保証人の変更について相談してください。
「同居人」と書くと、関係が伝わらないのではないでしょうか。
「同居人」は事実として正確ですが、パートナーであることまでは伝わりません。病院に関係を理解してもらいたい場合は「パートナー」と書き、受領証や住民票の写しを添えるのが分かりやすい方法です。どこまで伝えるかは本人とパートナーで話し合って決めてください。
二人とも身元保証人を頼める親族がいない場合はどうすればよいですか。
互いが相手の保証人になる方法のほか、保証人なしでの入院を病院に相談する方法、民間の身元保証サービスを利用する方法があります。民間サービスを選ぶ場合は、費用の内訳や預託金の管理方法を契約前に確認してください。
まとめ

入院時の身元保証人を親族に限る法律はなく、同性パートナーの名前を身元保証人欄に書くことは問題ありません。ただし保証人欄には、費用の連帯保証、緊急連絡先、退院時の引取り、遺体の引取りという4つの役割が含まれており、特に連帯保証では極度額を上限とした支払い責任をパートナーが負います。
署名の前に極度額、続柄の書き方、引き受ける役割の範囲を確認し、親族に限ると言われた場合は担当部署につないでもらって事情を説明してください。医療に関する意思表示書や任意後見契約、死後事務委任契約、遺言書をあわせて整えておけば、保証人欄に書いた関係を書面で裏づけられ、入院の場面で二人の関係を守りやすくなります。
