新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募を徹底解説!

中小企業庁関連の新しい補助金制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の公募要領(第1回、令和8年6月29日公開)が発表されました。本補助金は、これまでの「ものづくり補助金」と「中小企業新事業進出促進補助金」を統合・再編した制度で、中小企業等による革新的な製品・サービス開発から、新市場への進出、海外展開までを幅広く支援します。

本記事では、公募要領の内容をもとに、対象となる事業者や補助金額、対象経費といった制度の概要から、実際の申請から採択・交付までの流れ、申請にあたって押さえておきたいポイントまでを整理してお伝えします。新製品・新サービスの開発や新規事業への進出、海外展開を検討している中小企業の経営者・担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事は令和8年6月29日公開の公募要領(1.0版)に基づいています。要領は今後改訂される可能性があるため、申請の際は必ず事務局の公式サイトで最新情報をご確認ください。

目次

補助金の概要

制度の目的

本補助金は、中小企業等が取り組む、技術的革新性のある製品・サービスの開発、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、そして海外市場開拓に向けた国内輸出体制の強化という3つの取り組みを支援するものです。これらを通じて企業規模の拡大や付加価値の向上を図り、生産性向上と賃上げへつなげていくことを目的としています。

3つの申請枠

補助対象となる事業内容に応じて、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つの枠が設けられています。枠によって補助上限額・補助率・対象経費の範囲が異なるため、まず自社の取り組みがどの枠に該当するかを見極める必要があります。

① 革新的新製品・サービス枠

自社の技術力を活かし、顧客に新たな価値を提供する革新的な新製品・新サービスの開発を支援する枠です。単に機械装置やシステムを導入するだけで新製品・新サービスの開発を伴わない場合や、業界内で既に相当程度普及している製品・サービスの開発は対象外です。

従業員数補助上限額(賃上げ特例適用時)
1〜5人750万円(850万円)
6〜20人1,000万円(1,250万円)
21〜50人1,500万円(2,500万円)
51人以上2,500万円(3,500万円)

補助下限額は100万円、補助率は中小企業者1/2(賃上げ特例適用時2/3)、小規模企業者・小規模事業者及び再生事業者は2/3です。補助事業実施期間は交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)となっています。

② 新事業進出枠

既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。ここでの「新規性」は日本初・世界初である必要はなく、自社にとって新規であれば該当します。一方、既存製品の製造量の増大や商圏の拡大、単なるメニュー追加といった取り組みは対象外です。

従業員数補助上限額(賃上げ特例適用時)
1〜20人2,500万円(3,000万円)
21〜50人4,000万円(5,000万円)
51〜100人5,500万円(7,000万円)
101人以上7,000万円(9,000万円)

補助下限額は750万円、補助率は中小企業者1/2(賃上げ特例適用時2/3)です。補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)となっています。

③ グローバル枠

自社製品等を活用し、自発的に新たな海外販路を開拓するための国内製造等拠点の強化を支援する枠です。取引先の意向が主導する取り組みは対象外となります。補助上限額は新事業進出枠と同額ですが、補助率は2/3に設定されており、海外旅費や通訳・翻訳費も対象経費に含まれる点が特徴です。補助事業実施期間は新事業進出枠と同様、交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)です。

対象となる事業者

補助対象者は、日本国内に本社及び補助事業実施場所を有し、次のいずれかに該当する事業者です。

  • 中小企業者(業種ごとに資本金・従業員数の基準あり。例:製造業・建設業・運輸業は資本金3億円以下または常勤従業員300人以下)
  • 小規模企業者・小規模事業者(例:製造業は常勤従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下)
  • 特定事業者の一部(中小企業者よりやや規模の大きい事業者)
  • 特定非営利活動法人(収益事業を行っている等の条件あり)
  • 農事組合法人
  • 中小企業等と共同申請を行う対象リース会社

一方、次のような事業者は補助対象外です。

  • みなし大企業(大企業が株式の過半数等を保有している場合など)
  • 応募申請時点で従業員数が0名の事業者
  • 過去に事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金等で採択取消や交付決定取消を受けた事業者
  • 直近3年間の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者
  • 新事業進出枠に限り、創業1年未満の事業者
  • 法人格のない任意団体(一定の場合を除く)、収益事業を行っていない法人、政治団体、宗教法人

また、親会社・子会社などの「みなし同一事業者」を含め、同一事業者からの応募は1回の公募につき1申請までと定められています。なお、事業再構築補助金やものづくり補助金など複数の補助金に同時期に応募すること自体は可能ですが、複数に採択された場合はいずれか1つを選んで交付申請を行う必要があります。

補助対象事業の要件

申請にあたっては、3〜5年の事業計画を策定し、次の基本要件をすべて満たす必要があります。

  1. 付加価値額要件:事業計画期間において、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率を4.0%以上とする目標を設定すること
  2. 賃上げ要件:一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上とする目標を設定し、交付申請までに全従業員等へ表明すること。目標未達の場合は補助金の返還義務が生じます。
  3. 事業場内最賃水準要件:事業場内の最低賃金を、地域別最低賃金より毎年30円以上高い水準に保つこと。こちらも目標未達の場合は返還義務があります。
  4. ワークライフバランス要件:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・公表していること
  5. 子育て等に関する職場環境整備要件:「ライフデザインサービスの活用」「家事代行・ベビーシッターサービスの活用」「既存の子育て支援制度の周知」のいずれかに取り組むこと(くるみん認定等の取得事業者は免除)
  6. 金融機関要件:金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合、当該金融機関による事業計画の確認を受けること

なお、より高い賃上げ目標(一人当たり給与支給総額の年平均成長率6.0%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より50円以上高い水準にする等)を設定することで補助上限額が引き上げられる「賃上げ特例」が用意されています。また、2024年10月〜2025年9月の間に地域別最低賃金に近い水準で雇用していた従業員が多かった事業者向けの「地域別最低賃金引上げ特例」もあり、これを適用する場合は基本要件の事業場内最賃水準要件が除外されます(小規模企業者・小規模事業者及び再生事業者は対象外)。いずれの特例も、要件を満たせなかった場合は上乗せ分の補助金の返還が求められます。

補助対象経費

対象経費は次のように区分されており、一部は補助対象経費総額に対する上限比率が定められています。

  • 機械装置・システム構築費(革新的新製品・サービス枠は必須、他の2枠は建物費とのいずれか必須)
  • 建物費(新事業進出枠・グローバル枠のみ対象)
  • 運搬費
  • 技術導入費(上限:対象経費総額の1/3)
  • 知的財産権等関連経費(上限:対象経費総額の1/3)
  • 外注費(上限:対象経費総額の1/4)
  • 専門家経費(上限:対象経費総額の1/5)
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費
  • 広告宣伝・販売促進費(上限:事業計画期間1年当たりの売上見込み額の5%)
  • 海外旅費・通訳・翻訳費(グローバル枠のみ対象)

一方、事務所の家賃や光熱費、一般管理費、事務用パソコンなどの汎用品、自社の人件費、税理士・弁護士への支払い、消費税相当額などは補助対象外です。対象経費は「専ら補助事業のために使用されるもの」であることが原則で、既存事業と共用する経費や同一事業者内の部署間での支払いなどは認められません。

申請から採択・交付までの流れ

スケジュール

項目日程
公募開始令和8年6月29日(月)
電子申請受付開始令和8年8月31日(月)
申請締切令和8年9月30日(水)18:00(厳守)
採択発表令和8年12月頃(予定)

締切間際は申請が集中し、電子申請の入力に数時間を要することもあるとされています。時間に余裕を持った申請が推奨されています。

申請〜交付までのステップ

  1. 事前準備:GビズIDプライムアカウントの取得(発行まで約1週間)や、一般事業主行動計画の策定・公表(手続きに約1〜2週間)など、時間のかかる手続きから着手します。
  2. 電子申請:事業計画書のほか、直近3期分の決算書、従業員数を示す労働者名簿の写し、確定申告書の控え等の必要書類を電子申請システムに入力・添付して申請します。金融機関からの資金提供を受ける場合や、リース会社と共同申請する場合は、それぞれ追加の書類提出が必要です。
  3. 審査:外部有識者による審査委員会が事業計画を書面で審査します。一定の基準を満たした事業者には、オンラインでの口頭審査(1事業者あたり15分程度)が実施される場合もあります。
  4. 採択発表:補助金交付候補者として採択されると通知が届きます。この時点はあくまで「候補者」であり、交付決定ではありません。
  5. 交付申請:採択発表から原則2か月以内に交付申請を行います。この段階で経費の精査が行われ、対象外と判断された経費があれば減額されます。
  6. 交付決定:交付申請の審査を経て、正式な補助金額が決定します。交付決定日より前に発注・契約した経費は補助対象になりません。
  7. 補助事業の実施:交付決定後、事業計画に沿って設備投資や開発等を実施します。
  8. 実績報告・確定検査:事業完了後30日以内(または完了期限日のいずれか早い日)までに実績報告書を提出し、検査を経て補助金額が確定します。
  9. 補助金の請求・支払:確定した補助金額が支払われます。
  10. 事業化状況報告:事業完了後、5年間にわたり計6回、付加価値額や賃上げ目標の達成状況等を報告します。目標未達の場合は返還が求められることがあります。

審査で確認される主なポイント

書面審査では、①補助対象事業としての適格性(要件を満たしているか、経費が事業目的に対して合理的か)、②経営戦略との整合性、③事業の実現可能性(目標値の妥当性、実施体制、財務状況等)、④新事業進出枠の場合は事業の新市場性・高付加価値性、⑤公的補助の必要性、⑥政策面での意義、といった観点から評価が行われます。事業計画書には、これらの観点を意識し、定量的・定性的な根拠を示しながら記載することが重要です。

また、次のような認定・宣言等を取得している事業者には、審査で一定の加点が行われます。

  • パートナーシップ構築宣言、くるみん認定、えるぼし認定、健康経営優良法人
  • 経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定、J-Startup
  • 研究開発費・試験研究費の計上、地域別・事業場内最低賃金の引き上げ実績

一方、過去の補助金で加点項目に関する目標を達成できなかった事業者や、類似テーマへの申請が特定の時期に集中し「過剰投資」と判断された事業者などは減点の対象となるため、注意が必要です。

申請にあたってのポイント・注意点

  • GビズID・一般事業主行動計画は早めに準備する:いずれも取得・公表までに1〜2週間程度かかり、遅れを理由とした申請期限の延長は一切認められません。
  • 事業計画書は必ず申請者自身で作成する:外部の認定支援機関等に助言を受けることは可能ですが、作成そのものを代行させることは認められず、発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消の対象になります。
  • 採択されても満額が交付されるとは限らない:交付申請時に経費の精査が行われ、対象外と判断された経費は減額されます。応募時に計上していない経費を後から追加することもできません。
  • 見積もりの取得を忘れずに:契約先1件あたりの見積額が50万円(税抜)以上になる場合、3者以上の見積もりが必要です。
  • 交付決定前の発注・契約はできない:交付決定日より前に契約・発注した経費は、理由を問わず補助対象外となります。
  • 賃上げ関連要件には返還リスクがある:目標未達の場合、未達成率に応じた返還義務が生じるため、実現可能性を踏まえた目標設定が重要です。
  • 口頭審査は申請者本人が対応する:経営コンサルタントなど外部支援者の同席・代理対応は一切認められず、判明した場合は不採択等の対象になります。
  • 他の補助金との重複に注意:事業再構築補助金やものづくり補助金等で採択取消等を受けている場合は対象外となるほか、同一経費での重複受給も認められません。
  • 採択後の説明会参加は必須:補助金交付候補者として採択された事業者は、事務局が実施するオンライン説明会に参加する必要があります。参加しない場合、採択は自動的に無効となります。
  • 取得財産の処分には制限がある:単価50万円(税抜)以上の設備等は「処分制限財産」として、法定耐用年数を経過するまで譲渡・廃棄等が制限されます。処分する場合は事前に事務局の承認と、残存簿価相当額等の納付が必要です。
  • 支払い方法にも要注意:補助対象経費の支払いは銀行振込のみが認められ、現金払いや手形、相殺、PayPayなどの決済サービスによる支払いは補助対象外となります。

まとめ

「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、革新的な製品・サービス開発から新市場進出、海外展開まで幅広い取り組みを支援できる制度です。一方で、付加価値額や賃上げに関する要件、採択後の経費精査、5年間にわたる事業化状況報告など、採択後も継続的な対応が求められる点は見落とされがちです。

第1回公募の申請締切は令和8年9月30日18時(厳守)です。GビズIDの取得や一般事業主行動計画の公表など時間のかかる準備もあるため、早めに情報収集を始め、必要に応じて認定支援機関等の専門家にも相談しながら、実現可能性の高い事業計画を練っていくことをおすすめします。

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