改正住宅セーフティネット法|2025年10月の変更点

改正住宅セーフティネット法が2025年10月1日に施行され、高齢者や単身者が賃貸住宅を借りにくい状況に対して、3つの方向から手当てが行われました。見守りが付いた居住サポート住宅の創設、緊急連絡先を親族に限定しない認定家賃債務保証業者の制度、そして居住支援法人による残置物処理です。

いずれも、入居を断る側である大家が抱えている具体的な不安を解消することで、結果として単身者が借りやすくなることを狙った設計になっています。制度を使うかどうかで、物件探しの選択肢は変わってきます。

※2026年9月現在の情報です。認定物件や認定業者の数は増減するため、最新の状況は情報提供システムでご確認ください。

目次

2025年10月1日に施行された改正の全体像

この改正は、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律などを一部改正したもので、2024年5月30日に成立し、同年6月5日に公布されました。施行日が2025年10月1日です。

柱主な内容誰の不安に対応するか
① 市場環境の整備終身建物賃貸借の認可手続の簡素化、居住支援法人による残置物処理、認定家賃債務保証業者の創設大家
② 居住サポート住宅の創設安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎが付帯する住宅の供給促進大家と入居者の双方
③ 地域の居住支援体制の強化国土交通大臣・厚生労働大臣による基本方針の共同策定、市区町村の居住支援協議会の設置促進入居者

根拠:国土交通省「住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律 概要」(PDF)

改正の背景には、単身世帯の増加があります。国土交通省の資料では、単身高齢者世帯は2030年に900万世帯に迫る見通しとされる一方で、全国の空き家は約900万戸、うち賃貸用は約443万戸あるとされています。住まいを探す人と空いている部屋の双方が存在しながら、両者がつながっていない状態を解消することが狙いです。

根拠:空き家の数値は2023年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)による

大家が心配していたことに、制度で手当てをした

入居を断られる理由は、収入や人柄ではなく、大家が対応しきれないリスクにあります。国土交通省の資料では、住宅確保要配慮者に対する大家の入居拒否感は高齢者で約7割、障害者で約7割、低額所得者で約5割、ひとり親世帯で約2割とされ、高齢者の入居拒否の理由は居室内での死亡事故等への不安が約9割を占めています。

大家の不安改正での手当て
死亡時に借家権が相続され、次の人に貸せない終身建物賃貸借の認可手続を、住宅ごとの認可から事業者の認可へ簡素化
亡くなった後、部屋に残された家財を処分できない入居者からの委託に基づく残置物処理を、居住支援法人の業務に追加
家賃を滞納されるのではないか要配慮者が利用しやすい認定家賃債務保証業者を国土交通大臣が認定
入居後に何かあっても連絡や相談をする人がいない安否確認と見守りが付帯する居住サポート住宅を創設

終身建物賃貸借は、賃借人の死亡時まで更新がなく、死亡時に契約が終了する賃貸借です。相続人に借家権が相続されないため、大家は次の入居者に貸せなくなる事態を避けられます。従来は住宅ごとに都道府県知事等の認可が必要でしたが、改正により事業者単位の認可に変わり、手続きの負担が軽くなりました。

残置物については、2021年に国土交通省と法務省が策定した残置物の処理等に関するモデル契約条項を活用する形が想定されています。賃貸借契約の解除に関する委任契約と、残置物処理に関する委任契約を結んでおく構成です。

根拠:国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」

認定家賃債務保証業者制度は、緊急連絡先の壁に効く

家賃債務保証業者には2017年に創設された登録制度がありますが、今回の改正ではその上に認定の仕組みが加わりました。国土交通大臣が、登録業者のうち一定の要件を満たす者を認定家賃債務保証業者として認定します。

認定基準には、居住サポート住宅に入居する住宅確保要配慮者の家賃債務保証を原則引き受けること、緊急連絡先を親族などの個人に限定しないことが含まれています。あわせて、独立行政法人住宅金融支援機構の家賃債務保証保険によって、保証業者側が抱えるリスクを下げる仕組みも用意されました。

根拠:国土交通省「認定家賃債務保証業者制度」

単身者にとって重要なのは、緊急連絡先に関する基準です。保証人は保証会社で代替できても、申込書の緊急連絡先欄で親族を求められて行き詰まる例が多いため、ここを認定の要件に組み込んだ意味は小さくありません。

居住サポート住宅は、見守りとセットの住まい

居住サポート住宅は、居住支援法人等が大家と連携し、ICT等による安否確認や訪問等による見守りを行い、生活や心身の状況が不安定になったときに福祉サービスへつなぐ住宅です。市区町村長等が、国土交通省と厚生労働省の共同省令に基づいて認定します。

改正前のセーフティネット登録住宅が「大家が入居を拒まないこと」と「物件情報を公表すること」で供給する仕組みだったのに対し、居住サポート住宅は「居住支援法人等がサポートを行うこと」で供給する仕組みになっています。物件の条件ではなく、入居後の支援によって住まいを確保するという考え方の転換です。

入居する要配慮者については認定家賃債務保証業者が家賃債務保証を原則引き受けるほか、生活保護受給者の場合は住宅扶助費について代理納付が原則化されました。改修費等の補助によって供給を促す予算措置も講じられています。

物件は国土交通省の情報提供システムで検索できます。地域によって認定の進み方に差があるため、まず自分の住みたい地域で登録があるかを確認してみてください。

参考:国土交通省「居住サポート住宅情報提供システム」

相談窓口も整備が進んでいる

改正では、国土交通大臣と厚生労働大臣が共同で基本方針を策定することとされ、住宅施策と福祉施策の連携が制度の前提に位置づけられました。市区町村による居住支援協議会の設置は努力義務とされ、住まいに関する相談窓口から入居前・入居中・退居時の支援までを地域で担う体制づくりが進められています。

居住支援法人は、改正前の2017年の制度に基づいて全国で800を超える法人が指定されており、地域の担い手は着実に増えてきました。物件の紹介だけでなく、入居後の見守りや相談にも対応します。

参考:国土交通省「居住支援法人」

単身者の入居は、実際にしやすくなるのか

制度としては、これまで個人の保証人と親族の連絡先に依存していた部分が、事業者と仕組みに置き換えられました。緊急連絡先を親族に限定しない保証業者、見守りが付いた住宅、残置物処理の委任という3点が揃えば、大家が断る理由の中心にあった不安は具体的に解消されます。

一方で、居住サポート住宅の認定は始まったばかりで、地域によって物件数に差があります。認定家賃債務保証業者の数も限られているため、希望する地域ですぐに使えるとは限りません。当面は、UR賃貸住宅やセーフティネット登録住宅、居住支援法人への相談と組み合わせて探すのが現実的な進め方になります。

保証人なしで借りる方法の全体像は保証人なしで賃貸は借りられる|2026年の選択肢にまとめています。入院や就職を含めた場面ごとの対処は身元保証人がいない人の総合ガイド|4つの場面と備えをご覧ください。

よくある質問

居住サポート住宅に入るには、どこに申し込めばよいですか。

国土交通省の居住サポート住宅情報提供システムで物件を検索し、掲載されている連絡先へ問い合わせる流れになります。自分で探すことが難しい場合は、都道府県が指定する居住支援法人や市区町村の住まいの相談窓口に相談してください。

終身建物賃貸借を選ぶと、入居者にとって不利になりませんか。

賃借人の死亡時まで更新がない契約であるため、期間ごとの更新手続きや更新拒絶の心配がなくなる点は入居者にも利点があります。一方で契約は死亡時に終了し相続されないため、同居している家族がいる場合の扱いは契約内容で確認しておく必要があります。

認定家賃債務保証業者は、どこで調べられますか。

国土交通省の認定家賃債務保証業者制度のページで、制度の内容と認定を受けた業者が公表されています。認定は2025年10月以降に始まったもので、順次追加されていくため、最新の一覧を確認してください。

すでに賃貸で暮らしていますが、この改正は関係ありますか。

残置物の処理等に関するモデル契約条項に基づく委任契約は、入居中でも新たに結べます。更新の際に大家から入居継続を不安視されている場合、この契約を結ぶことで話し合いが進みやすくなります。居住支援法人に相談すれば、受任者の候補についても情報を得られます。

まとめ

2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法は、市場環境の整備、居住サポート住宅の創設、地域の居住支援体制の強化という3つを柱としています。終身建物賃貸借の手続簡素化と居住支援法人による残置物処理が死亡時の不安に、認定家賃債務保証業者と居住サポート住宅が入居中の不安に、それぞれ対応する構成です。

単身者にとって大きいのは、緊急連絡先を親族などの個人に限定しないことが認定の基準に入った点です。制度の運用はまだ始まったばかりで地域差もありますが、居住支援法人や市区町村の相談窓口を入口にすれば、頼れる家族がいない状態でも住まいを探す道筋は確実に広がっています。

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